「私の出あっていること」
今私の出あっている事、それはつねに千載一遇の事である、と信じ、だからつたなくも書きとめておくのだ。
三月一日。月と火星と木星が一番近づいて一カ所に集まり、それはきれいだった。
又今日四月末日には金星がすばらしく西空で光り、まるでその廻転速度で水しぶきをはねとばしている水車のように見えた。それも今日が彼女の地球への最近接の日だったのだ。
本当は毎日が、つねに何等かの意味で千載一遇なのであり、私たちは毎日ハッとし、毎日驚く事に出あって居り、それを知らないのはつい見過ごしているだけなのだ。
その事情は私が、やっといまごろ気づき判って来た事である。私の軌道がだんだん終着に近づいて来たため、それでそのシリアスな事実に、心が多分目ざめて来たのであろう。
永瀬清子 焔に薪を