「夜あけ」
一日に一度ずつ色彩のなくなることは
ほなとうに いいことだ、
あすのあさ鮮(あた)らしく生まれ出るのを
こんなに待ちどおしくよろこぶ心を持っている私にはー
この空間に在りと思われ
まだ姿をあらわさぬ わがひとよ
その人が今私に見えないこともいいことだ
地球のまるみだけ ぼんやり見えるつめたい空気の中で
翼のない鳥のかたちの影をおとしながら、
ただひとり あの樅の木が
だんだん輝いてくるのをまっているように
新しい朝の光を待ち焦がれている私にはー
永瀬清子詩集 第七章 告知